T邸防音室
防音室、第3作目は木造戸建住宅の1階和室のリフォームである。
場所は京都の、すぐ隣に神社の森が続く閑静な住宅街だ。
設置場所が前面道路にすぐ面した部屋で、隣家と前の家とが接近
しているため、思い切ってピアノが弾けないという状況であった。
音楽家夫妻のためのレッスン室なのであるが、奥様がピアニスト
という事で、今回は響きを追求するだけでなく聴き疲れを防止するために、
壁の一部に吸音材を貼った。他は前2作と同じように、床壁天井全て
を既存躯体と絶縁して、防音室を入れ込むという考え方である。
木造住宅に防音室を設置する際に一番問題となるのが、床の補強
である。建築基準法をクリアした通常の建物であれば、グランドピアノ
を置く程度なら特別な補強は必要ない。しかし防音室自体の
重量をプラスすると、床の積載荷重を少し超えてしまう。そこで
まず床下に等ピッチで基礎板と束を立てて補強した。
壁の吸音材には「ダンボード」を使用した。ロックウールをガラスクロス
で包んだもので、機械室の吸音材としておなじみの素材である。壁前面に
貼ってしまうと逆に音の響きが無くなってしまうため、あえてボーダーで
部分張りとしている。これから使っていただく中で、床にラグを敷いたり
して、お好みの音響を作っていってもらえればと考えている。
床材には、前回と同じ店舗用のビニール床タイルを使用しているのだが、
今回は白い石目調のものが選ばれた。白大理石のようで、とてもピアノが
際立っている。
奥の白いドアの向こうは、もともとの押入れを楽譜庫に改造してある。
そのため防音室自体はすっきりと使う事ができる。
全体的に、とても清潔ですっきりした部屋に仕上がったと思う。
今後の使われ方が楽しみである。