I邸防音室
防音室、第5作目は大阪市内のタワーマンションの高層階に設置する事になった。施主は大学教授であるが、ピアノを本格的な趣味とされていて、今回はイギリスで購入されたスタインウェイ社製ピアノのための部屋である。
当初は防音なしで今と同じ位置にピアノを置かれていたが、隣家からの苦情があり、相談を受けた。
いつも感じるのであるが、音のトラブルは音を受ける方はもちろん、音を出す方も同様に辛いものである。周りに気兼ねなく自分の演奏に集中出来る環境が大切である。
そこで防音をする訳であるが、やはり今まで壁が無かった場所には出来れば壁は無い方がいい。理想はガラス張りの防音室であるが、今回はそれに近づけるべく、初めて2面L型連窓の防音室とした。
やってみると実際には技術的にいろんな問題があった。先ず防音性能の問題。これはどうしても開口面積が増えると防音性能は少し劣ってしまうので、防音サッシの性能を上げ、隙間を徹底的に埋めるなどの努力をした。しかし隣家側は壁である事や、床壁天井全てをマンション躯体から絶縁しているので、実際の性能は大丈夫なレベルである。
次に構造の問題。L型連窓のコーナー部分には木造の柱が必要であり、そのディテールに苦労した。
結果なんとか2面L型連窓の防音室が完成した訳であるが、さながらピアノのショウルームのようである。音響もまずまずで、これからは気兼ねなく演奏を楽しんでいただきたいと思う。