SINOSAKA S- MUSIC STUDIO

LAST UPDATE: 2016.03.05

新大阪S邸音楽スタジオ


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新大阪にあるマンションの、防音スタジオ付住戸へのリモデルである。住戸ではあるが、実際施主は近隣に住戸をお持ちで、ここには住まわれる訳ではない。思い切りピアノを弾ける趣味の空間を持ちたいという事でこの住戸を購入され、今回の依頼となった。

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施主は音楽家ではないが、仕事と子育てのかたわらに趣味としてずっとピアノを続けてこられた。両方一段落したのを機に思い立ち、自身の研鑽の場と、要望があれば練習や発表の場所がない音楽家のために場所を提供し応援する事もお考えである。
そのため今回の工事に関しては、私を選んでいただいた事も含め、新しい提案に対してかなり寛容に受け入れていただいた。

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改修前は3LDKの間取りであったが、そのうちの2室を防音スタジオにし、残り1室は最低限寝泊り出来る予備室としてそのまま残した。前の家主が一度リフォームをされていて、水回りは比較的新しかったのでそのまま使い、主にメインの防音室と玄関からそこに至る動線を新しくする事となった

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これまで手掛けてきた防音室は、他はそのままで1室の中だけリフォームする事が多く、部屋の中だけで完結するのが常であった。しかし今回はあえて外見も異質な部屋を挿入することにより、他の空間も活性化するような効果を狙った。

 内装の色には思い切ったピンク色を使用した。なんとなく確信があり一度使ってみたかった色であるが、普通はなかなか使わせてくれないだろうと思っていた。今回ダメもとで提案したところが、二つ返事でOKとなった。施主のチャレンジ精神と特別な部屋という意識が何かこの色に合致したのかもしれない。その後OKはもらったものの、やはり実際に壁紙を貼り終えるまで不安はあった。しかし結果はこれで良かったと思う。写真よりも実際の空間は不思議と落ち着くのである。施主にも喜んでいただけた。

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通常防音室は既存躯体と絶縁するために、マンション住戸の中にもう一軒小屋を建てるような事をする。そのため、小屋として構造的にも完結していなければならない。今回は梁型の出幅が大きかったために分厚く重い防音資材を支える事ができなかった。そこで梁下にサポート柱を2本入れ、梁部分の壁にも構造用合板を貼増しして門型構造を形成して対処する事にした。施主にもご理解をいただき、無垢の木材柱を着色して使用たのだが、結果として施主の持ち込まれたアンティーク調家具や照明と調和して、なんとか納まった。

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 防音室の外側、LDKに当たる部屋は用途としては防音室の待合と休憩場所である。玄関からここまでを非居住空間としてとらえ、マンション住戸ではあるが床はタイル貼り調の床材などを使用した。前述したが、防音室に面する壁は他室とは異質な黒い木目のものとし、中での演奏風景を眺められるようにはめ殺しの窓を穿ってある。

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↑LDK

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↑廊下から

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ピアノを搬入してこちらから窓越しに見ると、これがなかなか良いものである。例えはどうかと思うが、カーマニアがガレージのお気に入りの愛車をリビングに開けた窓からにやにやしながら眺めるような感覚というか、何か特別感を演出するのである。

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何はともあれ、無事完成し防音性能も目標を達成した。あとはこの空間が施主の今まで思い描いてこられた夢を受け止め、さらにこれから予想を超えるような使われ方をするような、そんな発展を願っている。