LOIMER

LAST UPDATE: 2006.07.17

LOIMER

2006.5.25

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ロイジウムから少しワイン畑の中を歩いた所にこのワイナリーはある。建築雑誌で見るグラフィックの期待をまったく裏切るように、この建物はそのおよそ半分を地中にうずめられ、ひっそりとたたずんでいる。建物の機能もシンプルにワインのテースティングと事務機能、あとは全てワインを造るための施設である。訪れた時もオーナー自ら農作業に従事されていたが、建物の見学が目的である事を告げると、内部を快く見せて下さった。

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前面道路側へは建物の黒い塊が山から二つ突き出しているだけである。開口部が一つ低めに計算された位置に穿たれている棟がゲスト用で、もう一棟は農機具等の倉庫である。ワインセラーへは別に入口が設けられており、やはり築山に埋もれていてトンネルをいったんゲスト棟へ入り、前室から長い階段で下り
て行くようになっている。地下には縦横に長大なトンネル状のセラーが延びている。ゲストは建物横に設けられたコンクリートの階段を5段上がった所に、存在感を殺したように設けられた、高いスリット状のドアをすり抜けて中に入る。とたんに明るく開放的な空間がそこに広がる。まず目を引くのがテイステ
ィング用の、端部がダイナミックにはね出した全長8mものダイニングテーブルである。天井、壁は共にコンクリート打放しで、壁際のスリットのトップライトが光を落とす。

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前面道路側とは対照的にワイン畑に面した芝張りの中庭側には大型の引戸が設けられ、明るい開放的な空間をつくり出している。中庭に出てワイン畑の方へ上がっていくとやっと建物の全体を把握出来るが、屋根も緑化されているために、本当に山の一部のようである。オーストリアの建築家の根本にある自然への向き合い方、繊細な感性が感じられる。